宮部みゆき「理由」

今週から宮部みゆき原作のドラマ・シリーズが始まった。その第一弾が「理由」。
 
1998年に出版され、ミリオンセラーとなったこの小説を「個人的な理由」があって、僕は2007年に読んだ。
(その理由を書くには、膨大な時間が必要なので、ここでは割愛しますが・・・)
 
高層マンションから飛び降りる男を途中のフロア住人が見たという奇跡の証言や片倉荘という簡易宿泊所
は覚えていたが、居座り屋(占有屋)などの謎解きもすっかり忘れていて、ドラマを楽しむことができた。
年をとってきて、とみに記憶が弱ってきたが、こういう場合には悪くない。
 
高村薫もそうだが、長編ミステリーは確かに面白いのだが、手も疲れるし、目も疲れるから
安直にドラマや映画で楽しむのはぼくらの世代には合っている。
模倣犯」も映画で楽しんだ。
 
だが、気になったのは、ドラマで主演した寺尾聰やその娘・香里奈、元妻・麻生祐子
がどうも原作にあったのだろうかということである。
家の文庫本を確認すると、案の定、見当たらない。
600ページの大作なので、見落としたのかもしれないが・・・
 
文庫本の解説者が書いていたが、斬新なドキュメンタリー型かつクールな小説スタイルで
膨大な量の証言やバブル崩壊後の様々な社会問題をえぐりとる「うまさ」を楽しむことが
宮部ワールドであり、ドラマでは難しいのではないかと視聴前には思っていた。
 
ところが、寺尾家族の葛藤を随所にちりばめたことで、事件が起こった「理由」を
視聴者に納得させるテクニックはさすが、ドラマ制作のプロ集団だ。
 
ただひとつだけ苦言を言わせてもらえるとするならば、香里奈が車椅子なのはどうなのか?
最近のドラマは、人気の韓国ドラマの安直さに負けてしまい、
「37歳・・・」「もう一度君に・・・」「最高の人生・・」など、安易に記憶消失とか車椅子などの
ハンデキャップに頼りすぎていないだろうか?
 
そして、こういう長編小説を読むということとドラマ・映画で見るということは全く別のものなのだと
いうことも改めて実感した。
 
みなさんも是非、原作を読んで、違う面白さを味わってみてください。
僕ももう一度「理由」を読み返したり、「模倣犯」も挑戦してみようと思います。
さらに解説者が対比した阿部公房「燃えつきた地図」や龍之介「藪の中」を読み返したり、
冒頭に書いた「個人的な理由」をブログに書いてみることも・・・
僕たちには有り余る老後があるのだから・・・