沖縄の良さとは?

観光地入口のあるプレハブ作りのショップ。

もともとはクラブハウスの土地を追い出された我々クラブのメンバーの一人が観光地のお客目当ての商売を始めたのだが、居場所のない我々の憩いの場所としてコーヒーを飲んだり、ゆんたくしたりしていた。いろいろな環境の変化もあって、今は世代が代わりT君が経営している。彼は前の経営者の弟子であり、僕の静岡の家に泊まりにきていろいろと車で富士山近くまで連れて行ってあげたこともある。

だから沖縄に来た時は挨拶をかかさずしているのだが、今週は忙しいらしく、いつも出払っていた。今日も朝に顔を出すと、不在。すぐ戻ってくるとのことで、ショップ内で

待つことに。スタッフは2人。学生アルバイト風の一人は壁に向かって座っていて、スマホを見ている。4人掛けのテーブル席に座ると、車を止めた時に駆け寄ってきたもう一人のスタッフは僕に受け答えるような顔をしながらも、スマホを打っている。僕が話かけると、迷惑そうな感じで、今忙しいので・・・と。ああ~スマホでお客さんに答えているのか?「邪魔したね」と立ち上がり、机の上に置いてあるポスターなどを見たりきれいに片付いている、奥の倉庫なんかを覗いていると「あの~部屋の中をうろうろされるとTさんに叱られるので・・」と言われ外に出る。まあ、べつに挨拶はいつでもできる。と車を出すと、入れ替わりのクラブメンバーのUさんが来たので、立ち話。ハウスから出てきたスタッフに「車ここでいいよね」と言ったら、「ここは隣の蕎麦屋の駐車場で・・・向こうの道の駅の駐車場にお願いしたいのですが。。。」

 

なるほど、今、車があふれているわけでもなく、蕎麦屋のお客もまだ来る時間でもない。T君の神経質な顔が目に浮かび、もう僕たちが来ること自体が迷惑なのだろう。

従業員たちを教育し、給料を安定的の払うためにはお客様を第一に考え、売り上げを拡大しなくてはならない。そういう合理的な考え方は悪いとはいえない。

問題はそれが、沖縄の人々を幸せにするのかということだ。

本土出身の裕福になったプチ成功者は、貧しい沖縄の人たちをどうにかしてあげたいと自分たちの尺度でものを考える。このショップを立ち上げた人もお金を工面した人も本土出身の人で、良かれとと思って動き始めたのだ。一時期は僕らのクラブメンバーもスタッフとして駆り出されたこともあった。立ち上げた人の行き過ぎた不法行為によって行政処分を受け、営業権、使用権をはく奪された。この不法行為に僕はT君との確執が少なからず影響しているように感じる。確かに昔の運動部であったような徒弟制度、パワハラがあったものの、T君が出資者や性格の穏やかな人々を仲間に引き込み、彼を孤立させたことは明らかだった。僕は出資者に文句を言った。「この平和な自然豊かな沖縄を楽しんでいたクラブをぶち壊したのはあんただ!残り少ない老後の唯一の楽しみと思っていたのに!」良かれと思って大勢を巻き込んだ結果、結局はばらばらになり、3年後エリアの使用権は取り戻したものの、ショップは営業エリアを制限されている。その中でT君は新たなアトラクションを加え、必死に営業を拡大している。潰した二人を見返してやりたいという気持ちも強いのだろう。

 

沖縄出身のスタッフはT君から今まで経験したことない緊張やプレッシャーを受けているように見える。彼らは生来優しい環境で育てられているから、T君を追い出し、経営権を奪うような行為はしないだろうが、彼らは楽しく仕事していけるのだろうか?ゆったりとした時間とのんびりした生活が沖縄の魅力。掘っ立て小屋のクラブハウスで、缶ビールを飲みながら、うだうだと同じ話を繰り返していたあの頃を僕は思い出すのである。