1Q84

5月28日朝、青豆は雨が横殴りに窓に当たるのを見ながら、友人と電話していた。

「今日のゴルフは止めましょう」そういって青豆が電話を切り、なにげなくテレビを

観るとNHKニュースがこう伝えた。「本日、村上春樹待望の新刊が発売されます」

ああ、天は今日ゴルフを止めて、この本を読みなさいと言っているのだ。

青豆はパソコンで、東伊豆近くの本屋の電話番号を調べ、9時から10時に

3軒の本屋に電話してみた。なるほど日本という国は東京以外は文化を理解しないと

考えているようだ。冷たい反応の本屋の答えを反芻しながら、

しかたなく、Amazonにアクセスし、上下巻を一括オーダーした。

こういう場合、上巻だけをオーダーする方が良かったのだが、青豆にはそんな知識はなかった。

システムは5月31日から6月1日を配送予定として、返答した。

しかたない、配送先は東京なので、多分31日日曜日には来るだろう。

そんな甘い期待はすぐに消える。31日日曜日、6月1日月曜日システムはまったく反応しない。

いてもいられず、近くの本屋に言ってみるが、陰も形もない。店員に詰め寄っている人が

いた。「6月6日は確実なんですか?」「それは確約できません。前日にならないと・・・」

なるほど、まだ、Amazonの方がまだ、ましなのか・・・

2日7時、Amazonからメールが来る。「このオーダーは分割されました。とりあえず、

上巻だけを明日3日にお届けします」佐川急便の追跡システムを見ると、もう東京城南に

来ているらしい。とすれば、世田谷ならもしかして2日には来るかもしれない。

しかし、佐川はなぜか、それを千葉に送り、さらに神奈川県(?)世田谷営業所

を経由するという。これは、完全にいやがらせだ!夕方になっても、来ないので、

犬の散歩に出かけると、佐川の車に2度すれちがう。いっそ、つかまえて聞いてやろうか

とも思ったが、大人気ないので、我慢した。家に戻ると、「佐川君からの手紙」が・・・

18:00までに連絡しないと、また、明日になるって!5分前に連絡し、

20:45とうとう、「1Q84」が手に入る。苦節7日。これほどまでに

恋焦がれた本もない。青豆はその禁断の扉を開いたのだった。