住まいのエッセンス・第1章玄関・その5

その年の12月に転職をした私は、賃貸していた自宅に帰ることができず、やむを得ず

自宅近くに借家住まいをすることになります。

転職したベンチャー企業が、自宅に戻れるまで家賃を負担してくれるということで、

私たちは自宅より広い4LDK50坪の1軒屋を借りることになったのです。

階段を1メートルほど上がった所に玄関があり、白い欧米風のアルミドアを開けると

小さなたたきと「上がりかまち」がありました。正面にはリビングのドア、左手にはキッチン

へのドア、2階へ上る階段がありました。この家は、当時の私たち家族の理想の大きさを備えていて、

非常に快適だったのですが、私が生まれて初めて金縛りにあったり、階段付近で、

謎の物音がしたりという、ちょっと不気味な家でした。

2年ぶりに戻った自宅でしたが、他の家を経験した結果、家族4人で3LDKというのは

ちょっと寂しい、さらに和室が2部屋あり、毎日布団を上げ下げする面倒臭いと言うことと、

子供たちが中高一貫の私立中学に通うことになって、通学がきついことなどの理由から私たちはまた、

転居を考えることになります。

本来は、増築をすることが一番なのですが、この家は増築を前提に設計していなかったため、

1部屋増やすためには、ほぼ2階をすべて作り直さなければいけないということになり、

かなりの費用がかかることが判明しました。当初、建築士さんが将来を考えて、台所の上を吹き抜け

にした方がいいのではという意見を予算が苦しく拒否したつけがまわってきたのです。

そんなわけで、暇があると中古の1軒家を中心に探し始めました。しかし、都内で1軒家というのは、

なかなかいい物件はなく、古さや騒音を我慢するか、日当りや広さをあきらめなければなりません

でした。たまたま、土地でいいものが出てきたこともありましたが、「羊羹住宅」と呼ばれる

間口の狭い、長屋のような戸建しか建てられないことがわかり、絶望の中であきらめかけた時でした。

車の修理のために都内行き、しばし時間があり、うろうろしていましたら、新築マンションの販売会に

遭遇し、今の家を見つけたのです。このマンションは5DKだったのですが、私たちは今までの経験

からリビングにつながる和室を洋室に代え、14畳のリビングにしました。子供たちにも洋室を

1部屋ずつ割当て、念願のメインベッドルームにセミダブルのベッドを2つ入れることができました。

このマンションの玄関はやはり鉄の扉で、開けると右側1面が靴入れになっていて、靴入れの下部には

5-6足の靴がおける隙間もありました。左壁面は鏡になっていて、狭さを誤魔化しています。

風水では玄関に鏡は良くないとの話も聞いたことはありますが、出かける時に最後のチェックという

ことでは、どこの家庭にも鏡は必須と思います。

入居して2,3年経った頃、サムターン回しという錠破りの手口が話題になり、我が家も鍵を代え、

マンション入り口の鍵と玄関の2重体制に変えることにしました。

玄関で必要なものは、靴、傘なのでしょうが、それ以外に、鍵、認印、エコバッグなどがあります。

意外とそういうものを収容するスペースがないものです。毎日のことですから1つ引き出しがあって

もいいのではないかと思います。また、1戸建で勝手口があればいいのでしょうが、マンションなどは、

空き缶とか大型ゴミを置くスペースとか、ビールやジュースの置くスペースも玄関にあってもいいので

はないかと思います。